コラム

マーケティングの歴史〜プロダクトアウトからマーケットインへ〜

あなたの会社のマーケティングは、何年代の発想で動いていますか?

マーケティングの考え方は時代とともに大きく進化しています。「良いモノを安く大量に作れば売れる」という発想が通用していた時代から、現代の「個々の顧客に最適な体験を届ける」時代まで、その変遷を理解することで、自社が今どこにいるかが見えてきます。

あなたの会社のマーケティングは、何年代の発想で動いていますか?

マーケティングの考え方は時代とともに大きく進化しています。「良いモノを安く大量に作れば売れる」という発想が通用していた時代から、現代の「個々の顧客に最適な体験を届ける」時代まで、その変遷を理解することで、自社が今どこにいるかが見えてきます。

マーケティングの4つの時代

第1期:生産志向の時代(1900〜1950年代)

「作れば売れる」時代です。工業化が進み、物資が不足していた時代には、供給量を増やすことが最大の課題でした。フォードのT型自動車が代表例で、「大量生産・大量販売・低価格」が勝利の方程式でした。

この時代のマーケティング思考をプロダクトアウトと呼びます。自社が「作れるもの・作りたいもの」を起点に、それを売るための活動を行う発想です。

第2期:販売志向の時代(1950〜1970年代)

戦後の高度成長期、モノが増えてきたことで「いかに売るか」が焦点になりました。広告・訪問販売・値引き競争が激化した時代です。日本の高度経済成長期もこの時代に属します。

特徴は「売り込み型」。消費者に選択肢が増え、単に作るだけでは売れなくなり始めました。

第3期:マーケィング志向の時代(1970〜2000年代)

「顧客のニーズを起点にする」マーケットイン思考が主流になった時代です。市場調査(マーケティングリサーチ)が企業経営に組み込まれ、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)と4P(製品・価格・流通・プロモーション)の戦略的マーケティングが確立されました。

第4期:顧客中心・デジタルの時代(2000年代〜現在)

インターネットの普及により、顧客一人ひとりとの関係構築が可能になりました。Amazon・Googleに代表されるように、「個々の行動データ」に基づいたパーソナライズドマーケティングが主流です。また、SNSにより顧客自身が情報発信者となり、口コミ・レビューが購買に大きな影響を与えるようになりました。

日本企業が「プロダクトアウト」から抜け出せなかった理由

日本の製造業は、高度成長期の「技術力で世界を制した」成功体験を持っています。しかし、この体験が「良いモノを作れば売れる」というプロダクトアウト思考を強化しすぎ、市場の変化への適応を遅らせました。

家電業界の事例

かつて「技術の日本」と言われたパナソニック・シャープ・ソニーなどは、韓国・中国メーカーに市場シェアを奪われました。その背景には、

  • 「機能を詰め込む」技術志向が優先され、顧客が求めるシンプルさを見落とした
  • グローバル市場の価格感度や好みを考慮せず、自社基準で製品設計した
  • アフターサービスやエコシステム(周辺機器・ソフトウェア)の設計が後手に回った

これらはすべて「顧客の視点ではなく、自社の視点」で考え続けた結果です。

マーケットイン思考に転換した成功例

Amazonの事例

Amazonは1994年に「オンライン書店」としてスタートしましたが、現在は「あらゆるものを届けるプラットフォーム」になっています。この転換は、ジェフ・ベゾスが一貫して「顧客が何を求めているか」を起点に事業を拡張したからです。

「書籍を売りたい」から始めたのではなく、「顧客の購買体験を最高にしたい」から逆算した結果、書籍→電子書籍→Kindle→クラウド(AWS)へと事業が広がりました。

現代のデジタルマーケティングが変えたこと

デジタル化により、マーケティングに3つの革命が起きています。

  1. 測定できるようになった:広告の効果、顧客の行動、購買につながるルートが数値で追えるようになりました(Google Analytics、広告の転換率など)。
  2. 個別対応できるようになった:メルマガのセグメント配信、SNS広告のリターゲティング、Eコマースのレコメンド機能など、「個」に合わせたコミュニケーションが可能になりました。
  3. 顧客が発信者になった:企業→顧客の一方向だった情報の流れが、顧客が口コミ・レビュー・SNSで発信することで双方向化しました。良い顧客体験がそのまま低コストの集客につながる時代です。

中小企業へのメッセージ

「マーケティングは大企業のもの」という誤解があります。しかし実際には、中小企業ほどマーケットイン思考が大きな差異を生みます。大企業は資本力で誤魔化せますが、中小企業は「誰に・何を・なぜ選ばれるか」を明確にしなければ生き残れません。

次回は、マーケティング分析の基本ツールである「外部環境分析」の実践的な使い方を解説します。

筆者:芝 香(しば かおる)
ネクストソサエティ株式会社 代表取締役。北海道文教大学非常勤講師(経営マネジメント論・マーケティング論)、小樽商科大学ビジネススクール非常勤講師(ビジネスシミュレーション)、北海道大学講師(企業と仕事特論)。恵庭市主催の起業塾講師も務める。中小企業の経営支援やICT導入コンサルティングを専門とする。