「お客様が本当に求めているものがわからない」──そんな悩みは3つの質問で解決できます。なぜ選ばれるのか、競合はどこか、いつ満足を感じるか。事例とともに解説します。
「お客様が本当に求めているものがわからない」
「うちの強みって何だろう」
こんな悩みを持つ経営者は少なくありません。実は、3つの質問に答えるだけで、顧客価値の本質が見えてきます。
なぜ顧客価値を理解することが重要なのか
ドラッカーはこう述べています。
「顧客が買うものは製品ではない。欲求の充足である」
── P.F.ドラッカー
お客様が買っているのは「商品」ではなく「価値」です。ドリルを買う人が欲しいのはドリルではなく「穴」。その穴で何をしたいのか、なぜ穴が必要なのか──そこに本当のニーズがあります。
顧客価値を見つける3つの質問
質問1:お客様は、なぜうちを選んでくれているのか?
この質問の答えが、あなたの現在の価値です。
答えを見つける方法:
- 直接聞く:「なぜうちを選んでくださったのですか?」
- 口コミを分析:Google口コミ、SNSでの言及
- 常連客にインタビュー:「他にも選択肢がある中で、なぜ通い続けてくれるのか」
事例:自分では気づかなかった価値
北海道の工務店A社は「高品質な家づくり」が強みだと思っていました。しかし、顧客インタビューで出てきた言葉は意外なものでした。
「〇〇さん(営業担当)が、いつも丁寧に説明してくれる」
「わからないことを何度聞いても嫌な顔しない」
「打ち合わせが楽しかった」
お客様が本当に価値を感じていたのは「家の品質」ではなく「コミュニケーションの質」でした。
質問2:お客様は、うちに来なかったらどこに行くのか?
この質問の答えが、あなたの競合と差別化ポイントです。
ポイント:
- 競合は「同業者」だけではない
- 「何もしない」「自分でやる」も競合
- お客様が比較検討している選択肢を知る
| 業種 | 競合と思われがち | 本当の競合 |
|---|---|---|
| 学習塾 | 他の学習塾 | オンライン学習、家庭教師、自習 |
| 飲食店 | 近隣の飲食店 | コンビニ、出前、自炊 |
| 整体院 | 他の整体院 | 病院、マッサージ機、何もしない |
事例:本当の競合を知って戦略を変えた
地方のケーキ屋B店は、同じ町のケーキ屋を競合と考えていました。しかし、お客様アンケートで「コンビニスイーツ」「お取り寄せ」と迷う人が多いことが判明。
そこで「コンビニでは絶対に味わえない」特別感を打ち出し、オーダーメイドケーキに注力。結果、客単価が2倍になりました。
質問3:お客様は、どんな時に「買ってよかった」と感じるのか?
この質問の答えが、あなたが提供すべき体験価値です。
考えるポイント:
- 購入した瞬間ではなく、その後の体験
- 感情面の変化(安心、嬉しい、誇らしい)
- 第三者の反応(家族の喜び、友人からの褒め言葉)
| 商品 | 「買ってよかった」の瞬間 |
|---|---|
| スーツ | 大事な商談で自信を持てた時 |
| ケーキ | 子どもが「美味しい!」と笑顔になった時 |
| リフォーム | 毎朝キッチンに立つのが楽しくなった時 |
| 学習塾 | 子どもが「勉強が楽しくなった」と言った時 |
事例:「買ってよかった」を追求した写真館
写真館C店は、技術力の高さを売りにしていましたが、価格競争に巻き込まれていました。
そこで「お客様が写真を見てどう感じるか」を徹底的にインタビュー。すると「孫の写真を見ると元気が出る」「リビングに飾って毎日眺めている」という声が。
C店は「技術」ではなく「毎日幸せを感じられる写真」をコンセプトに。撮影前のヒアリングを強化し、「どんな瞬間を残したいか」を引き出すように。
結果、口コミが増え、価格競争から脱却。客単価も1.5倍になりました。
3つの質問の活用方法
1. 社内で議論する
経営者だけでなく、スタッフ全員で3つの質問について話し合います。現場のスタッフの方がお客様の本音を知っていることも多いです。
2. 定期的にお客様に聞く
アンケート、インタビュー、雑談の中で定期的に確認します。お客様のニーズは変化するからです。
3. マーケティングに反映する
見つけた「価値」をチラシ、ホームページ、SNSでの発信に反映します。「うちはこういう価値を提供しています」と明確に伝えます。
4. サービス改善に活かす
「買ってよかった」の瞬間を増やすにはどうすればいいか。逆に、その瞬間を損なっていることはないか。サービス改善のヒントになります。
よくある間違い
| 間違い | 正解 |
|---|---|
| 「うちの強みはこれだ」と決めつける | お客様に聞いて確認する |
| 「お客様は価格を重視している」と思い込む | 価格以外の価値を探る |
| 一度聞いたら終わり | 定期的に確認し続ける |
| 全員に同じ価値を提供しようとする | ターゲットを絞り、その人に最大の価値を |
まとめ
顧客価値を見つける3つの質問:
- なぜうちを選んでくれているのか?→ 現在の価値
- うちに来なかったらどこに行くのか?→ 競合と差別化
- どんな時に「買ってよかった」と感じるのか?→ 体験価値
この3つの答えを見つけることで、自社の本当の強みが見え、マーケティングの方向性が定まります。まずは明日、1人のお客様に聞いてみてください。
参考文献
P.F.ドラッカー『マネジメント[エッセンシャル版]基本と原則』ダイヤモンド社
セオドア・レビット『マーケティング発想法』ダイヤモンド社
筆者:芝 香(しば かおる)
ネクストソサエティ株式会社 代表取締役。北海道文教大学非常勤講師(経営マネジメント論・マーケティング論)、北海道大学会計レクチャー講師。恵庭市主催の起業塾講師も務める。中小企業の経営支援やICT導入コンサルティングを専門とする。