創業10年で7割が廃業する現実。「今儲かっている」と「長く続く」は別の話です。持続可能な経営に必要な5つの条件を、老舗企業や事業承継の事例とともに解説します。
「10年後もこの会社はあるだろうか」
「後継者がいない」「環境変化についていけない」
経営者なら一度は考える「持続可能性」。流行を追うのではなく、長く続くビジネスを作るために必要な条件を考えます。
なぜ企業は潰れるのか
中小企業庁のデータによると、創業から10年で約7割の企業が廃業します。その理由を分析すると、いくつかのパターンが見えてきます。
| 廃業理由 | 割合 | 内容 |
|---|---|---|
| 経営者の高齢化・健康問題 | 約30% | 後継者不在、体力的限界 |
| 業績悪化 | 約25% | 売上減少、利益確保困難 |
| 市場・環境変化 | 約20% | 需要減少、競合激化、技術革新 |
| 資金繰り | 約15% | 運転資金不足、借入返済困難 |
注目すべきは、「業績は黒字だが後継者がいない」という理由での廃業が増えていることです。これは「経営の持続可能性」が、業績だけでは測れないことを示しています。
持続可能な経営の5つの条件
条件1:顧客に必要とされ続けている
最も根本的な条件は、お客様から「なくなったら困る」と思われていることです。
チェックポイント:
- うちがなくなったら、お客様はどこに行くか?
- 代替手段はあるか?その場合、お客様は困らないか?
- 新しいニーズに対応できているか?
条件2:利益を確保できている
当たり前ですが、利益がなければ続かない。赤字でも借金で延命できますが、それは持続可能とは言えません。
チェックポイント:
- 営業利益率は5%以上あるか?
- 価格競争に巻き込まれていないか?
- 特定の顧客・商品に依存しすぎていないか?
条件3:人材が育っている
社長がいなくても回る組織かどうか。社長一人に依存している会社は、社長が倒れたら終わりです。
チェックポイント:
- 社長が1ヶ月不在でも業務は回るか?
- ベテランの技術・ノウハウは若手に伝承されているか?
- 次のリーダー候補は育っているか?
条件4:変化に対応できる
環境は必ず変化します。変化を察知し、自らも変わる力があるかどうか。
チェックポイント:
- 5年前と同じことをやっていないか?
- 新しい技術・サービスにアンテナを張っているか?
- 「うちはずっとこのやり方」と固執していないか?
条件5:社会から受け入れられている
法令遵守、環境配慮、地域貢献など、社会的責任を果たしているか。昨今は特に重要性が増しています。
チェックポイント:
- 従業員を大切にしているか?
- 地域社会との関係は良好か?
- 環境や持続可能性への配慮はあるか?
ケーススタディ
ケース1:100年企業を目指す老舗和菓子店
背景:創業80年の和菓子店。3代目が「100年企業」を目標に経営改革を実施。
課題:
- 若い世代の和菓子離れ
- 職人の高齢化、技術伝承の遅れ
- 「昔ながらの味」へのこだわりで変化を拒否
改革内容:
- SNS映えする新商品を開発(伝統 + 革新)
- 若手職人の採用、先代からの技術伝承をマニュアル化
- 和菓子教室を開催し、若い世代との接点を増やす
- 地元学校への出前授業で地域との関係強化
結果:若年層の来店が増加、メディア露出も増え、売上は5年で30%増。後継者候補の若手も育ってきた。
ケース2:脱・社長依存で事業承継に成功
背景:建設業B社。創業社長(70代)がすべての判断を行い、社長なしでは何も決まらない状態。
問題:
- 社長が入院した1ヶ月間、意思決定が停滞
- 幹部は「社長に聞かないと」が口癖
- 後継者候補の息子は「自分には無理」と消極的
改革内容:
- 権限委譲を段階的に実施(小さな判断から)
- 幹部会議を月1回開催し、幹部の判断力を養成
- 社長の仕事を「見える化」し、引き継ぎリストを作成
- 後継者を外部研修に参加させ、経営者仲間を作る
結果:3年かけて事業承継を完了。現在は息子が社長、創業者は会長として見守る体制に。
ケース3:市場縮小に対応した印刷会社
背景:地方の印刷会社C社。デジタル化で印刷需要が年々減少。
問題:
- 売上が10年で半減
- 価格競争で利益率も低下
- 「印刷屋」という自己定義から抜け出せない
改革内容:
- 「印刷会社」から「情報伝達支援会社」へ再定義
- 印刷 + Web + SNS運用のパッケージサービス開発
- 中小企業のマーケティング支援を新規事業に
- 印刷設備への投資は最小限に抑え、ソフト力を強化
結果:売上は横ばいだが、利益率は2倍に。「印刷だけでなく、販促全般を相談できる」と評価され、顧客との関係が深化。
持続可能な経営のためのアクション
今日からできること
- 5つの条件をチェックする
上記の5条件について、自社の状態を評価してみる - 「もし自分がいなくなったら」を考える
業務の属人化、暗黙知の見える化を検討 - 変化を受け入れる姿勢を持つ
「うちはこれでやってきた」を疑う勇気 - 長期的な視点を持つ
短期の利益より、10年後の姿を考える
定期的に行うこと
- 年1回:経営計画の見直し、市場環境の再分析
- 半年1回:人材育成の進捗確認、権限委譲の検討
- 月1回:財務状況のチェック、顧客の声の収集
まとめ
持続可能な経営の5つの条件:
- 顧客に必要とされ続けている:なくなったら困る存在か
- 利益を確保できている:価格競争に巻き込まれていないか
- 人材が育っている:社長がいなくても回るか
- 変化に対応できる:固定観念に縛られていないか
- 社会から受け入れられている:社会的責任を果たしているか
「今儲かっている」と「長く続く」は別の話です。10年後、20年後を見据えた経営を心がけましょう。
参考文献
P.F.ドラッカー『マネジメント[エッセンシャル版]基本と原則』ダイヤモンド社
ジム・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー』日経BP
筆者:芝 香(しば かおる)
ネクストソサエティ株式会社 代表取締役。北海道文教大学非常勤講師(経営マネジメント論・マーケティング論)、北海道大学会計レクチャー講師。恵庭市主催の起業塾講師も務める。中小企業の経営支援やICT導入コンサルティングを専門とする。