地域で愛され、長く続く店舗には共通点があります。ターゲットの明確さ、リピーター重視、口コミ発生、スタッフの活気、数字の把握──5つの成功法則を事例とともに解説。
「なぜあの店は繁盛しているのか?」「うちと何が違うのか?」
私がこれまでコンサルティングしてきた中小企業の中で、地域で愛され、長く続いている店舗には5つの共通点がありました。
共通点1:「誰のための店か」が明確
成功している店は、ターゲット顧客が明確です。「誰でもどうぞ」ではなく、「〇〇な人のための店」と言い切れます。
失敗パターン
- 「幅広い客層に対応したい」→ 誰にも刺さらない
- 「断るのがもったいない」→ ブランドがぼやける
成功パターン
- 「40代以上の女性向け美容室」
- 「子育て中のママが一人で来れるカフェ」
- 「マニアックな〇〇好きのための専門店」
事例:ターゲットを絞って売上が2倍に
札幌市内の美容室A店は、オープン当初「どなたでも」を謳っていました。しかし差別化できず低迷。
そこで「40代以上の髪悩みを解決する専門サロン」に方針転換。白髪ケア、エイジングケアに特化したメニューを開発。
結果、口コミで40代以上の女性客が増え、客単価も1.5倍に。2年で売上は2倍になりました。
共通点2:リピーターが多い
成功店舗は新規客より既存客を大切にしています。一般的に、新規客獲得コストは既存客維持コストの5倍と言われます。
リピートを生む仕組み
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 顧客管理 | 名前を覚える、前回の購入内容を記録する |
| 接点の維持 | LINE、DM、ニュースレターで定期的に連絡 |
| 特別扱い | 常連限定メニュー、優先予約、誕生日特典 |
| コミュニティ | イベント、会員制度でつながりを作る |
リピート率の目安
- 飲食店:40%以上で優良、60%以上で繁盛店
- 美容室:80%以上で優良
- 小売店:30%以上で優良
共通点3:口コミが発生している
成功店舗は、お客様が自発的に「あの店いいよ」と言ってくれる仕組みを持っています。
口コミが発生する条件
- 期待を超える:「思っていたより良かった」という驚き
- 語れるネタがある:「あそこの〇〇が〇〇なんだよ」と説明しやすい
- 紹介したくなる:自分が紹介することで株が上がる
口コミを促す仕掛け
- 紹介特典(紹介者・被紹介者両方に)
- SNS投稿でドリンク1杯サービス
- Google口コミ投稿へのさりげないお願い
事例:口コミだけで年間100人の新規客
地方の整体院B店は、広告費をほぼゼロに抑えながら、年間100人以上の新規客を獲得しています。
その秘訣は「紹介カード」。施術後に「もし周りに困っている方がいたら」と3枚のカードを渡します。紹介された人は初回半額、紹介した人には次回1,000円引き。
「押しつけがましくなく、でも紹介しやすい」と好評で、新規客の8割が紹介経由です。
共通点4:スタッフが活き活きしている
成功店舗はES(従業員満足)がCS(顧客満足)の源泉だと理解しています。
スタッフが活き活きする条件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ビジョンの共有 | 「何のためにこの仕事をしているか」が明確 |
| 裁量権 | 自分で判断できる範囲がある |
| 成長実感 | スキルアップ、キャリアアップの道筋がある |
| 承認 | 頑張りを認めてもらえる、感謝される |
| 働きやすさ | シフトの融通、休暇の取りやすさ |
経営者のチェックポイント
- スタッフの表情は明るいか?
- 自発的な提案が出てくるか?
- お客様とスタッフの会話は弾んでいるか?
- 離職率は高くないか?
共通点5:数字を把握している
成功店舗の経営者は、「感覚」ではなく「数字」で経営しています。
最低限把握すべき数字
| 指標 | 内容 |
|---|---|
| 客数 | 1日・週・月の来客数 |
| 客単価 | 1人あたりの購入額 |
| リピート率 | 2回以上来店する客の割合 |
| 粗利率 | (売上 - 原価)/ 売上 |
| 損益分岐点 | 黒字になる最低売上高 |
事例:数字を見える化してV字回復
赤字続きだった飲食店C店。経営者は「なんとなく売上が足りない」としか把握していませんでした。
コンサルティングで数字を分析すると:
- 客数は十分だが、客単価が低い
- ランチは黒字だが、ディナーが大赤字
- 特定メニューの原価率が異常に高い
対策として:
- ディナーのメニューを刷新、単価アップ
- 原価率の高いメニューを改良または廃止
- 毎日の数字を「見える化」する仕組みを導入
結果、半年で黒字化を達成しました。
5つの共通点チェックリスト
自店の状態をチェックしてみてください。
1. ターゲット
- 「誰のための店か」を一言で言えるか
- ターゲット以外の客を断る勇気があるか
2. リピート
- リピート率を把握しているか
- リピートを促す仕組みがあるか
3. 口コミ
- 「語れるネタ」があるか
- 紹介を促す仕掛けがあるか
4. スタッフ
- スタッフの表情は明るいか
- 自発的な提案が出てくるか
5. 数字
- 主要な数字を把握しているか
- 数字に基づいて判断しているか
まとめ
- ターゲットが明確:「誰でもどうぞ」は誰にも刺さらない
- リピーターが多い:新規より既存客を大切に
- 口コミが発生:期待を超え、語れるネタを作る
- スタッフが活き活き:ES(従業員満足)がCS(顧客満足)の源泉
- 数字を把握:感覚ではなく数字で経営する
参考文献
佐藤尚之『ファンベース』筑摩書房
小阪裕司『「買いたい!」のスイッチを押す方法』角川書店
筆者:芝 香(しば かおる)
ネクストソサエティ株式会社 代表取締役。北海道文教大学非常勤講師(経営マネジメント論・マーケティング論)、北海道大学会計レクチャー講師。恵庭市主催の起業塾講師も務める。中小企業の経営支援やICT導入コンサルティングを専門とする。