コラム

ラッキーピエロに学ぶ地域密着経営〜なぜ函館以外に出店しないのか〜

なぜマクドナルドに勝てるのか?なぜ全国展開しないのか?函館のラッキーピエロに学ぶ、中小企業が大手に勝つための7つの成功要因を解説します。

「なぜマクドナルドに勝てるのか?」「なぜ函館以外に出店しないのか?」

北海道函館市を中心に展開するハンバーガーチェーン「ラッキーピエロ」。地域密着経営の教科書として、全国の経営者から注目されています。

本記事では、ラッキーピエロの戦略を分析し、中小企業が大手に勝つためのヒントを探ります。

ラッキーピエロとは

ラッキーピエロ(通称「ラッピ」)は、1987年創業の函館発ハンバーガーチェーンです。

項目 内容
店舗数 17店舗(すべて道南地域)
看板メニュー チャイニーズチキンバーガー
特徴 注文を受けてから調理、全店舗が異なる内装
受賞歴 日本経営品質賞、地域ブランド大賞など多数

函館ではマクドナルドより高い認知度と支持を誇り、「函館に来たらラッピ」は観光客にも定番になっています。

なぜ函館以外に出店しないのか

「全国展開すればもっと儲かるのでは?」──そう思いますよね。しかし、創業者の王一郎氏は明確な理由を持っています。

「全国チェーンになれば、効率化のために味を落とさなければならない。私たちは函館のお客様に最高の商品を届けることを選んだ」

これはランチェスター戦略の典型的な成功例です。

ランチェスター戦略の原則

  • 弱者は局地戦で戦う:限られたエリアに経営資源を集中
  • 強者の土俵で戦わない:全国チェーンと同じ戦い方をしない
  • 差別化で勝負:効率より「ここでしか食べられない」価値

ラッキーピエロの7つの成功要因

1. 「作り置きしない」へのこだわり

大手チェーンは効率化のために作り置きしますが、ラッピは注文を受けてから調理。待ち時間は長くなりますが、熱々の商品を提供できます。

教訓:効率を犠牲にしてでも守るべき価値がある

2. 全店舗が異なる内装

17店舗すべてがテーマの異なる内装。サーカス風、アンティーク風、海の見える店など、「全店舗を巡りたい」というファンを生んでいます。

教訓:画一化しないことで「この店に行く理由」を作る

3. メニューの独自性

「チャイニーズチキンバーガー」は他のどこにもないオリジナルメニュー。ハンバーガーなのに中華風という意外性が話題を呼びます。

教訓:「他と同じ」では記憶に残らない

4. 地域イベントへの積極参加

地元の祭り、スポーツイベント、学校行事などに積極的に協賛・参加。「地域の一員」として認められています。

教訓:売上にならなくても、地域との関係構築に投資する

5. 従業員を大切にする

「従業員が幸せでなければ、お客様を幸せにできない」という考えから、働きやすい環境づくりを重視。離職率が低く、ベテランスタッフが多いのが特徴です。

教訓:ES(従業員満足)がCS(顧客満足)の源泉

6. ファンコミュニティの形成

ファンクラブ「ラッピFC」を運営。限定グッズ、会員限定イベントなど、熱狂的なファンを育てています。

教訓:お客様を「ファン」に、ファンを「伝道者」に

7. 「函館愛」の発信

店舗やメニューを通じて「函館の魅力」を発信。観光客にとって「函館を象徴するブランド」になっています。

教訓:地域と一体化したブランディング

大手チェーンとの違い

項目 大手チェーン ラッキーピエロ
調理方法 作り置き、効率重視 注文後調理、味重視
店舗デザイン 統一デザイン 全店舗異なるテーマ
メニュー 全国共通 地域限定、独自メニュー
戦略 全国展開、スケールメリット 地域集中、深い関係構築
価値提供 どこでも同じ安心感 ここでしか味わえない体験

ラッキーピエロ戦略を自社に活かす

チェックリスト:あなたのビジネスに適用できるか

  • 地域限定の価値を作れるか?
    「うちでしか買えない」「ここでしか体験できない」ものはあるか
  • 効率より品質を選べるか?
    コスト増を受け入れてでも、守りたい品質はあるか
  • 地域との関係を深められるか?
    地元のイベント、学校、団体との接点はあるか
  • 従業員を大切にしているか?
    働きがいのある職場を作れているか
  • ファンを育てているか?
    リピーターを超えた「熱狂的なファン」はいるか

具体的なアクションプラン

  1. 「うちらしさ」を定義する
    大手にはできない、自社ならではの価値は何か?
  2. 地域との接点を増やす
    地元のイベントに参加、地域団体との連携を検討
  3. ファンコミュニティを作る
    LINE公式アカウント、会員制度、ファンミーティングなど
  4. ストーリーを発信する
    なぜこの地域で商売をしているのか、その想いを伝える

地域密着経営の落とし穴

ただし、地域密着だからといって成功するわけではありません。

落とし穴 回避策
「地域」に甘えて品質が下がる 地元だからこそ、品質への妥協は命取り
内輪ノリになる 新規客・観光客にも開かれた姿勢を忘れない
変化を恐れる 「伝統」と「停滞」は違う。進化し続ける
市場が縮小する 観光客、移住者など新しい市場も開拓

まとめ

  • ラッキーピエロの成功は「全国展開しない」という選択から始まった
  • 弱者の戦略:局地戦、差別化、経営資源の集中
  • 7つの成功要因:作り置きしない、全店舗異なる、独自メニュー、地域参加、従業員重視、ファンコミュニティ、地域愛
  • 大手と同じ土俵で戦わない:効率より「ここだけ」の価値
  • 自社に活かす:「うちらしさ」の定義、地域との関係深化、ファン育成

参考文献
竹田陽一『小さな会社★儲けのルール』フォレスト出版
佐藤尚之『ファンベース』筑摩書房
ラッキーピエロ公式サイト:https://luckypierrot.jp/

筆者:芝 香(しば かおる)
ネクストソサエティ株式会社 代表取締役。北海道文教大学非常勤講師(経営マネジメント論・マーケティング論)、北海道大学会計レクチャー講師。恵庭市主催の起業塾講師も務める。中小企業の経営支援やICT導入コンサルティングを専門とする。